VOL40 終の棲家とは
2007/03/14



日本の民家は、本来冠婚葬祭などに対応できる間取りが一般的でした。
アジアなどに旅に出たとき、その国の地方に行くと日本の民家に似た佇まいの家を見ることができますが
都市部になると日本のようにモダンな家や集合住宅が一般的です。

今のようなLDK的な住まいになると冠婚葬祭などを考慮に入れた住まいを求める方も
少なくなってきました。
そういう施設はすべて街の中にあり、家の中に持ち込まないというほうが正しいかもしれません。
また、常に健康な状態で家の中に住むということが前提になり、そうでない状態は車椅子で
生活するという想定のもとで多くの方が家づくりを考えます。
歩くか車椅子という2つの生活の想定です。

ところが現実は家の中でさまざまなことが起こり、どのようなことが起きても対応のできる
住まいこそが快適な住まいを言えるのではないでしょうか。

これは数年前にわたしが経験したどこにでもある出来事です。



深夜、寝ていたわたしの携帯電話のベルがなりました。
階下に寝ていた母が体調不良を訴え、電話をしてきたのです。
急いで階下に下りてみると居間にパジャマのまま倒れていました。
電話機のあるところまで行きわたしに電話をするのが精一杯だったのだと思います。
息が荒く、視線も定まらない状態だったので急いで救急車を呼びました。
数分で救急隊が到着し、動かさない状態で脈拍や瞳孔など調べました。
どうやら動かせない状態です。
ストレッチャーの用意をし静かに家の中をストレッチャーで移動し、道路で待機している
救急車に乗ることができました。
引き違いや引き戸の建具だったため、容易に建具をはずすことができたのが幸いしていました。

もし、家の中でストレッチャーで移動できなかったら母は危険な状態でありながら
外の救急車まで両脇を抱えられながら移動したでしょう。

その後、介護の甲斐もなく残念ながら数日後に他界しました。
今では当たり前のように病院で亡くなりました。
今は病院で亡くなると、そのまま斎場へ亡骸を移動させることも多いそうですが、
母は亡くなる直前まで意識があり、早く退院して家に帰りたいという希望もあったので
自宅に母と一緒に帰り、母の友人たちとお別れをしてから斎場に出棺しました。
もう二度と戻ることができない家なので、棺とともに玄関から旅立せてあげることができました。




わたしの両親は長く住みれた自宅から、旅たせてあげることができました。
スピードと効率化の時代、そんな面倒なことをするより病院から斎場に行ったほうが
手間が省けるという考え方もあるかもしれません。

家を「終の棲家」といいます。
寿命が絶えるまで住み続けることの出来る家のことを言います。
そういう家を設計したいと思います。



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